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酒蔵宮本第6番目日本酒、鍋島

今日紹介する鍋島(なべしま)は、佐賀県にある富久千代酒造で造られている日本酒だ。

鍋島は佐賀県だけでなく、九州全体でも最も有名な日本酒の一つで、もし代表的な酒を挙げるなら**産土(うぶすな)**と同じくらいの知名度で語られる銘柄だと思う。

今日もランニングコースで福岡空港の近くにある久谷(ひさや)まで行ってきたついでに、鍋島と赤武を買ってきた。
鍋島は色々なシリーズがあるが、今回は今シーズン限定のBlossom Moonを選んだ。人気の酒らしく「お一人様一本まで」という制限が付いていて、観光客にもかなり人気がある日本酒なんだろうなと感じた。

僕にとって鍋島のイメージは、**「強すぎない味」**だ。

辛口タイプの鍋島でもドライになりすぎないし、甘口タイプでも甘くなりすぎない。

だから辛口でも甘口でも料理と調和しやすく、この記事を書く前に夕食で食べた焼肉ともよく合っていた。

日本国内でも「面白いものが少ない県」としてよく話題にされる佐賀県に、日本酒ファンがわざわざ行く理由は、佐賀県の誇りである鍋島があるからじゃないか——そんなことを今日酒を手に取った瞬間に考えたわけではなく、前からなんとなく思っていたことだ。

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ちなみに先に言っておくが、私は鍋島も佐賀県も好きな人間だ。

いつか鍋島の酒蔵にも訪れてみたいし、蔵で行われている’鍋島 草庵’にも行ってみたいと思っている。

それでは、ここから鍋島について見ていこう。

誕生の背景

 

富久千代酒造の歴史は1924年に始まり、現在は創業から100年を少し超えた。
酒蔵としては、特別に古いというほどではないが、一定の歴史を持つ蔵だと言える。

蔵は佐賀県鹿島市の「肥前浜宿(ひぜんはましゅく)」という地域に建てられた。
この地域は江戸時代から酒造りが行われてきた土地としても知られている。

しかし、「鍋島」という銘柄が誕生したのは、それよりずっと後の1998年のことだ。

鍋島を生み出したのは、現在三代目として蔵を継いでいる
飯盛直喜(いいもり なおき)氏である。

飯盛氏はもともと家業を継ぐつもりはなく、大学を卒業したら普通の会社員になるつもりだった。
しかし、1988年に父親が交通事故で突然亡くなったことで状況が大きく変わる。

その出来事をきっかけに、飯盛氏は酒蔵へ戻ることになった。
しかし当時、酒蔵の立地も日本酒の市場環境も決して良いものではなかった。

国内の日本酒市場は縮小し、代わりにビールやワイン、ウイスキーが人気を集めていた。
さらにディスカウント店が安く日本酒を販売するようになり、価格面でも競争力は高くなかった。

多くの困難を乗り越えた人々の物語に共通するように、
この蔵もまた「流れに埋もれてしまうのか、それとも自分たちの武器で流れを変えるのか」という分岐点に立っていた。

そこで富久千代酒造の若いメンバーと飯盛氏は、
**「九州を代表する酒を造ろう」**というスローガンのもと、新しい銘柄 鍋島 を生み出す。

しかし、写楽のように登場してすぐ人気を得たタイプではなかった。

中には登場した瞬間から市場で評価される酒もあるが、鍋島はそうではなかった。

そもそも九州は日本酒より焼酎で有名な地域であり、
さらに佐賀県も日本酒の名産地として広く知られていたわけではなかったからだと思われる。

それでも蔵の人々は、鍋島について何度も話し合い、改良を重ね、
決して時間を無駄にすることなく努力を続けた。

そしてその努力は、2011年にロンドンで開催されたIWC(International Wine Challenge)での受賞によって大きく報われる。
この受賞をきっかけに、鍋島は一気に知名度を高めていった。

今では、彼らが醸造を始めたときに掲げた
「佐賀を代表する酒」という目標を達成し、
さらに九州を代表する日本酒の一つとして堂々と語られる存在になっている。

外部では、福島県の写楽や三重県の而今と並び、
**「ポスト十四代」**と呼ばれる銘柄の一つとして挙げられることもある。

飯盛氏はあるインタビューで、こんな話をしている。

「父もまた家業を継ぐのが嫌で東京の大学へ進学しましたが、
結局は戻ってきて、最後まで酒造りをして人生を終えました。」

自分の人生を振り返ると、
「やはり親子だな」と感じることがあるそうだ。

突然の父の死。
そこから始まった決意。
そしてその決意を実現した現在。

知れば知るほど、より好きになってしまう歴史を持った日本酒。
それが鍋島である。

鍋島についての私の体験

今回購入した鍋島 Blossom Moonは、
ある意味でラベルのイメージに近い味と香りを感じた。

花の香りがはっきりするわけではないが、
どこか爽やかな香りと、ほんのりとした微炭酸感がある。

日本酒アプリ Sakenomy では甘口寄りと紹介されていたが、
私にはやや辛口寄りに感じられた。

後味は長く引かず、すっと綺麗に切れていく。

この日一緒に食べたのは焼肉。
脂がそこまで多くないカイノミや牛タンと合わせたが、やはり相性はとても良かった。

もつ鍋のような味の濃いスープ料理でなければ、
たいていの料理とはよく合う酒だと思う。

食事の後はまだ仕事もあったので、
今回は四分の一ほどだけ飲んだ。

残りを明日の夜に全部飲むか、少し残してまた楽しむか、そんなことを考えている。

鍋島のおかげで、
今日は幸せな悩みを抱えながら眠れそうだ。

ありがとう、鍋島。

……と書いて記事を終えようと思ったが、
鍋島のことを書いているうちに、
韓国でとても美味しく飲んだ鍋島のことを思い出したので、
最後にその写真を添えておく。

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韓国で飲んだ鍋島特別純米吉川山田錦。