酒蔵宮本第12番目日本酒、而今

screenshot 2026 04 10 at 6.43.11 pm

歴史

1818年、三重県名張市に創業した木屋正酒造。 

「而今」が生まれる以前は、「高砂」という銘柄の酒を醸造してきた。

約200年間、県内だけで取引をしてきた、対外的にはほとんど知られていない酒蔵だった。

現在の蔵元である大西唯義氏が27歳で酒蔵に戻った時、酒蔵が醸造していた酒はわずか約1,800Lだった。 

(最も人気の高い獺祭酒造は、年間約5,400,000Lを生産している。)

大西氏はさまざまな方面で酒蔵のPRに力を入れたものの、大きな手応えは得られないまま、その状況は2003年まで続いた。

ターニングポイント 

木屋正酒造のターニングポイントは、大西氏が十四代を体験したことで訪れる。
大西氏は、酒蔵を立て直すためには、対外的な活動やPRに力を注ぐことよりも、十四代のような丁寧に醸された酒を造ること自体が、酒蔵を再生させる力になると考えるようになった。

そうして木屋正酒造は、主力商品だった普通酒の製造を中止し、より良い酒を醸すという方針を新たに打ち立てた。

しかし、蔵には従業員に支払う給与がなかったため、大西氏はひとりで新しい酒を造り始めた。

そして2005年、大西氏がたったひとりで醸し上げた酒こそが、今日私たちが熱狂する「而今」である。 

(而今の意味はCarpe diem、すなわち「今この瞬間を逃すな」という意味だ。)

十四代の影響を受けて生まれた酒だからなのかはわからないが、而今もまた全国でごく少数の特約店とのみ取引を行っている。 (2018年時点で約30店舗とのこと。)

そしてその理由もまた十四代と同様に、品質を絶対的に優先するがゆえに、安易に生産量を増やさないという原則があるからだ。

而今はこうして生まれた。

そして高砂も、また生まれ変わった。

  1. 先述のとおり、木屋正酒造は地域内だけで取引を行ってきた小規模な酒蔵で、普通酒を主力商品として扱ってきた。

    年間生産量もわずか1,800Lほどと、需要が極めて少ない酒蔵だった。
    大きな変革を起こしたいという思いはあったものの、従業員を雇う資金がなく、蔵元兼杜氏として6代目の家業を継いだ大西唯義氏がひとりで米を洗い、麹を造り、発酵過程を管理するすべての工程を担った。

    そしてその過程において、科学的なデータと精密な計測をもとに、完璧主義といっても過言ではない醸造に取り組んでいる。

2.「麹菌の胞子を振りかける際、米の温度を正確に30.5°Cに合わせ、29.8°Cまで冷却した後に再び30.5°Cへと戻し、一晩中43.0°Cを保ちます。この精密な温度管理のために米の水分含有量まで管理しており、水をml単位で計量し、浸漬時間をストップウォッチで計測しました」

2018年の記事に記された、大西氏の醸造に向き合う姿勢が垣間見えるひと言だ。 発酵において徹底した科学的な計算のもと、季節による味わいの変化を最小限に抑えようとする努力が伝わってくる。

  1. 而今が世に出た頃、木屋正酒造は普通酒の生産を中止したが、それと同時に高砂の生産も止まった。しかし2017年、酒蔵創業200周年を記念して、木桶仕込みと生酛造りを用いた高砂が再び世に登場した。 高砂もまた容易には手に入らない酒だが、三重県に行けば出会えるのではないか、とふと思う。

もし三重県に行く機会があれば、ぜひ探してみたい。(瓶ごと飲み干したい気持ちで..)

まとめ(私見)

而今をもって、3大プレミアム日本酒(十四代・而今・新政)についての背景知識をひととおり学んできた。

今でこそ全国で最も名の知れた日本酒たちだが、いずれも廃業の危機に瀕していた過去がある。

そのたびに、自分だけの信念を持つ蔵元が蔵を引き継いできた。

十四代が生まれた頃、蔵元は昼夜を問わず働き続け、病院に運ばれるほど疲弊していたという。

新政は、長年ともに醸造を支えてきたチームが解散し、新たなメンバーで仕込みを再スタートさせた時期もあった。 そして而今は、従業員に支払う給与もなく、蔵元がたったひとりで醸造を続けた。

今や輝かしいブランドとして、日本酒居酒屋に訪れる人々が真っ先に注文するこれらの日本酒にも、それぞれに激動の過去があった。

彼らの誰もが、自分たちの酒を世に出す直前まで、それが2026年に世界中の日本酒ファンに最も愛される酒になるとは、思いもしなかっただろう。 奇跡とはいつも、想像を超えたところに生まれるものだから。

十四代、新政、そして而今を口にする時、蔵元たちが初めてその酒を世に送り出した瞬間に思いを馳せることができる。 彼らの想像力は、どこまで自分たちの酒の未来を描いていたのだろうか。どこまで見通すことができていたのだろうか。

楽天市場やメルカリといったところでリセールされているプレミアム酒を目にする時、高いとは思いながらも、その価格にふさわしい位置まで上り詰めた幾つかのラベルの酒は、やはり大したものだと感じる。 純粋に市場が決めた価格が、定価の5倍、10倍を超える値でもなお認められているという事実が、それを物語っている。

Fin

出典